木材供給不足「ウッドショック」に伴う原木・木材製品価格の高騰
2021年5月12日ウッドショックとは?
木材が供給不足に陥り、価格が高騰する“第三次ウッドショック”に住宅業界が震撼しています。2021年3月ごろに影響が顕在化し、その後は悪化の一途をたどっています。 日刊木材新聞社の調査によると、ベイマツ乾燥材正角の4月の販売店価格は7万8000円/m3で、半年間で44%も上昇し、弊社仕入れの国産の桧の丸太であれば去年の平均単価の60%アップとなっております。
ちなみに、第一次ウッドショックは、1990年のバブル崩壊前で、住宅が1年間で170万戸建った年です。この1990年も全く住宅の材料が不足して、作れば売れるという年でした。しかし、1991年、バブル崩壊と共に次年度は、137万戸まで一気に着工数が落ち込んでいます。又、第二次ウッドショックは、2006年で、やはり着工数が近年にない129万戸建っております。そして、第1次ウッドショック同様に次年(2007年)には、106万戸まで落ち込んでおります。
ウッドショックの原因とは?
ウッドショックとは簡単に言えば、北米や中国における木材需要の増大と供給不足で日本に輸入材が入って来なくなり、それにつられて国産材の需要も増え入手困難になるという状況です。原因としてはいくつか挙げられますが、
①アメリカにおけるコロナ禍による住宅需要の増大:ステイホームやDIY需要、超低金利の住宅ローン、コロナによる勤務形態の変化が引き金
②中国の木材需要の増大:元々経済成長により需要が増大しており、コロナ禍からも早期に回復、富裕層・中間層の拡大で活発な内需が起こっている
③コロナ禍により木材輸送を担うシッパー(船便)不足:米国向けコンテナの増加、米国からの輸出物コンテナ減少、コロナ禍での荷役人員不足
④欧州内での公共工事増・温暖化影響:木造建築推進、暖冬・害虫による丸太不足(地域によっては例年の5割~6割)
などが事の発端とされ、それにより日本へ海外産の木材製品が供給されなくなっています。
日本の木材自給率は年々上がってきていますが、それでも建築用材の約50%を輸入に頼っています。特に価格とボリューム重視の大手ビルダーなどは主に構造材は輸入材を使っていますし、中小規模の工務店でも柱は国産だけれど太い木が必要になる梁桁などは米松やレッドウッド集成材といった輸入材を採用している所が多いです。
建築の部材ごとの自給率を示した公的なデータはないが、梁(はり)材と柱材の自給率はもっと低いとみられています。参考となるのが、日本木造住宅産業協会が会員を対象に実施した19年の調査結果です。梁材(横架材)の国産材使用率はわずか10%(集成材と製材の合計)、柱材は42%(同)。羽柄(はがら)材の50%(同)や構造用合板の81%(同)と比べて、梁材と柱材の国産材使用率が著しく低いことが分かります。
木材は他のパーツと違って、揃わなければ家が建てられません。これまで輸入材を使っていたビルダーなどは急いで国産材に切り替え、買い求めるようになりました。また、今後も国産材の需要が増えることを見越して、商社なども今ある製品在庫を買い付けるようになり、取り合いになっています。いま実際の需要がひっ迫しているというよりは、この仮需によって買い占めが起こり流通が混乱するという、コロナ初めの頃のマスクやトイレットペーパーと似たような状況になっていると思われます。国内の製材所さんによると、「おたくの木を売ってくれないか」と、これまで取引のなかった流通業者からもひっきりなしに電話がかかってくる状況だといいます。
ウッドショックのもう一つの大きな原因
・世界における日本の購買力の低下により、資源獲得競争に負けていること
です。そもそも、住宅着工数の減少が年々進み木材需要量も落ちてきていた日本。人口減少や経済力の低下で、今後もその傾向は避けられず、世界のマーケットから見れば、日本の市場はあまり魅力的ではなくなっています。木材に対してジャパングレードと呼ばれる厳しい品質を求めながらこれから需要が落ちていく日本に売るよりも、莫大な需要が今後も増えていく、経済成長中の国に輸出した方がいいと考えるのは当然のことです。
これまでは、日本の商社が経済力により大量に木材を買い付けることで、コストを抑えながら輸入材を安定供給することができていましたが、それがいつかできなくなるだろうということは、実は木材業界では以前から言われてきました。それが今回、コロナが引き金になり一気に現実になったといえます。
また木材以外にも、建築資材としてはガルバリウムや断熱材、住宅設備なども最近値上がりしてきています。私たちの身近なところでは、ガソリンも上がってきていますよね。木材だけでなく、日本は国際的な資源獲得競争に負けてきているのではないでしょうか。
しかし木材のいい所は、国内で生産できる資源だということです。半分を輸入に頼っていたため、今すぐに増産体制を整えられる状況ではないかもしれませんが、輸入材のように船が止まれば完全に供給ストップしてしまうということはなく、林業からの流通をしっかりつなげればある程度の生産ができます。60年前に植林して成長した日本のスギやヒノキでしっかりと木材を自給できる林業をつくるチャンスです。